ビキニ環礁シンジケート

書くことが楽しい

奇跡さえ起こればいい

 

 前にも書いたかもしんないけど俺と好きな人って実は高校が同じで、まあそんなの当時は全然知らなかったんだけど、それが本当に今になって悔やまれるんだよね。つーのも高校時代の俺って、後輩に天使がいる、みたいな可能性なんて微塵も考慮せずに日夜やりたい放題してて、それはもう、触れるもの皆傷付けて、酒に喧嘩にドラッグに明け暮れてた系だったわけじゃないですか。でもなんだろ、高校生にもなると徐々に周りの人たちも少し大人になろうぜみたいな雰囲気を出しきて、だけどあの、俺の出身中学って『ごちゃごちゃ言ってないで誰が一番馬鹿か決めたらいいんだ!』みたいなノリのとこだったからその影響もあって、大人になったら確実に負け、みたいな、俺こんなクラスに馴染んじまったらその場で自死しようと常に懐刀を持ち歩いてた。

 でもうちの高校って、なんつーのかな、そういうのと真逆で、すげーキラキラしてる感じを出そう出そうと学校ぐるみでしてくる感じの、勉強も人並み以上にできちゃうし、それでいて部活動も強い、自由な校風でたくさん個性的な人たちが居て、みんなで青春に全力投球だっ! みたいな、特に俺が外国語系の学科で女子が多かったから学校の中でも特にそういう風潮が顕著だったし、最初はそういうのに対して斜に構えたり揶揄してた人らも、二年の冬くらいにもなれば、まあ、見事にみんな染まっていって、家にかかってくるセールスの電話とかにも「あ、はい、すみません、恋に部活に大忙しで……」つって断るような感じで、いつからか俺も懐刀を持ち歩かなくなってた。

 一般の生徒ですらそんなだから、生徒の代表たる生徒会長なんてもう、ありていに言ってしまえば青春龍ブルースプリングドラゴンなわけで、なんか一年の時に文化祭があったんだけど、その前夜祭? 後夜祭? で当時の生徒会長が、体育館の舞台上から彼女に向けて「最近受験勉強が忙しくて、前より話したり遊んだりする時間が少なくなったけど、それでもずっとお前のことが好きだっ!」的な再告白をしてて、それを聞いた生徒たちはひゅーひゅー! みたいな、他にもクラスメイトの女の子たちが学校に軽音楽部がないから同好会立ち上げよう! つって、どこぞのアニメかよ、みたいな、とにかくそんなのが許容されて、そして評価されるような高校だった。

 で。冒頭で酒に喧嘩にドラッグにって嘘八百並べてた手前ほんとこんなこと言うのは恥ずかしいんだけど、俺は二年生からクラスの評議員だっのよ。評議員っつーと、つまり学級代表みたいな、言わばクラスで一番模範的な生徒なわけで、うちの学校は青春が至上命題とされてたんだから実質青春の申し子みたいな、青春のことなら踊り子さんところのノイズくんに訊きな、みたいな感じなわけで、まあ、ほんとはクラスの委員決めの日に欠席してたから閑職を押し付けられただけだったんだけど、とにかく世論の圧倒的な支持を得てクラスの代表、国で言えば総理大臣の地位に俺が就いていたわけで、要するに高校時代、俺は総理大臣だった。

 正直、内心「よっしゃ」って感じだったよね。だって去年の生徒会長の姿覚えてるし。あんな風に好き勝手振舞ってもいいわけでしょ?

 まあ、学校では生徒会長の方が立場は上だけどさ、総理大臣つったら数々の特権があるわけで、評議員である俺にもクラス内に限って言えば同等の裁量が認められるわけじゃんか。まずは国務大臣の任命権。俺がクラス運営に必要だと思った、具体的にはクラスの可愛い子だけを集めて「踊り子内閣」を組閣して、臨時会と称して夏休みの間特別招集をかけておっぱいを揉むことだってできるわけだ。当然、不逮捕特権のお陰で会期中は何しても捕まんない。テストだって内閣法7条の中止権を行使することで中止、これまでの成績も行政事件訴訟法27条に基いて行政処分等の執行停止命令を要求し、以後の授業は眠たくなったら警察法71条の緊急事態を布告して中断、そんな俺に反発し辞任を要求してくるであろうPTAに対しては「内政干渉であり誠に遺憾」っつーことで自衛隊法76条の防衛出動を発動して鎮圧すればいい。最強。

 あ、あと、総理大臣つったら当然給与が出るわけだよね? さすがに同じ年収である約4060万円とは言わないにしても、130,000,000人で40,600,000円なんだから、40人ならだいたい、えーっと、年収128円? あっ、じゃあこれはいらないわ。うん。逆にこれはいらない。割に合わな過ぎ。受け取ることで納得したと思われるのが癪だし。

 まあ結論から言うと評議員って権力も報酬もないマジでただの小間使いだったし、それに気付いた瞬間、バッキャロー! って叫んで内閣総辞職したんだけど、なんだろ、生徒会長が青春龍ブルースプリングドラゴンなら、俺はこの時、怒鳴り龍バッキャロードラゴンだった、っつー話は本当に必要なくない? 勘弁してくれよ。じゃなくて、そっから評議員の仕事とかも完全にやる気がなくなったんだけど、評議員って体育祭とか文化祭で生徒会との絡みも当然あって、そこをもう一踏ん張りして真面目に取り組んでたら下級生、ひいては好きな人と関われる糸口になってたかもしんないっつー後悔が今あんの。つーかもうそれっきゃない、って。

 なんだろ、評議員にすっげーのがいんぞ、みたいに生徒会で話題になって、生徒会長直々に「あなたという才能が必要だ」みたく推薦されて、他クラスや学年からも三年の外国語科の評議員マジらしい、的な、あいつを取り込めば部活の予算がやべーことになる、正体はドラゴン、みたいな色んな噂が流れて。したら当然俺の好きな子は宇宙一可愛いんだから、所属してる部活の部長は予算獲得のためにその子を使おうとするわけじゃん。

 部長になんとしてでも予算を取ってこい、たとえ身体を使ってもだ、とか言われて、本当は嫌だけど部活のため、と俺しか居ない生徒会室に勇気を振り絞って入って、何でもしますからどうか、っつー好きな人に対して、俺は微笑みながら「Oh mon dieu, c'est un client rare. Un ange est venu. Que s'est-il passé?(おやおや、これは珍しいお客さんだ。天使が来てくださるとはね。いかがなさいました?)」つって。なにせ外国語科だしフランス語専攻してたからね。

 学校を牛耳っているイメージとはほど遠い俺の柔和な雰囲気と聞き慣れない流暢なフランス語に困惑している好きな人に対して、っとごめんよ、あっちが長くて日本語に不慣れなんだ、つってね。まあ、あっちっていうか好きな子とは隣の市なんだけど。今もフランス語分からないしグーグル翻訳使ってるし。

 んでまあ、ここに来た経緯とか聞いて黙っていた俺は、それがどういう意味か分かって来たんだよね? って静かに訊くんだけど、好きな人は、覚悟はできています……つって服を脱ぎ始めて、ワイシャツの第二ボタンに手を掛けた瞬間に、…………っぷ、はははっー! そんなに震えて……っくふ……なにが覚悟はできています、なのさ、はっはっはー! といきなり破顔して、自分が着てた学ランを好きな人の肩にかけてあげて、からかってごめんよ、みたいなやつ。そういうのをしたい。君は面白いね、気に入ったよ、予算のことは僕の方から言ってあげるから安心してネ、的な。

 あ、でもでも、せっかくのチャンスなんだから完全に接待を断るのは勿体無いしどうしよっかなー。好感度と欲望でちょうどバランスとれるとこってどこだろ、たとえば困惑しながら扉を出ようとする好きな人に対して、会長には僕から口添えするから君には、つって最後に口付けしちゃおっかなー。それともこれは寒ギャグ罪で捕まるカナ?^^;

 閑話休題。まあなんだ、要するに高校が同じだったのにも関わらず接点が一切なかったっつー時間なんて"無"じゃん、って話なんだけど、実際はこんな駄文を書いてる時間の方がはるかに"無"なんだよね。

 本当はこんなこと書いてる時間があるなら俺だって早くニンテンドースイッチマリオカートしたいの。買ったから。あんまりにすることがなくてマリオカートを買ったから。俺はそうやって一人の時間を一人で潰してうまいことやっていってるわけじゃん。大人の男性だから。

 ほらでも、こうやって別に好きな人との関わりなんて特別なくたって全然毎日楽しーなんてやってると、友達とかが辛そうに片思いとか失恋とかしてんの見ると羨ましいというか、俺こんな感じだけどちゃんと片思いってやつできてんのかな、みたいな感じになってくるよね。

 どこが好きなの? とか人から訊かれても、えっどこだろ、コップを静かに置くところ? あと目の動きとか、生への気力があまりなさそうな感じとか、ほらこないださーから始まって、最後はとにかくすげーの、お前さ、愛って知ってる? 今愛って言葉を聞いてなんらか想像したっしょ? それ。それが服着て歩いてんの。ウケんね。みたいな、そんな感じで決まった答えがあるわけじゃなくて、その時その時思いついた順に好きだな、良いなって思ったところを並べるだけで全然うまく答えらんないし、ずばっと好きな人のこんなところが好きって言えて、聞いてる人も、うわっ、そりゃ惚れちゃうよ、みたいな、出来えば全員が好きな人のことを好きになってくれるようなプレゼンを指し棒とか使ってしたいんだけど、だからそうやってちゃんと答えられる人ってほんと憧れる。

 好きな人って俺が持ってないもの全部持ってるし、反対に俺が持ってるものって好きな人にとっては不要なものばかりっぽくて、考え方とか嗜好も全然違うし、自分がどこに惹かれてんのか、何にこんな執着してんのかわかんなくなって、逆にどこが好きだと思う? つって、合コンに居るうぜーババアみたいになっちゃう。

 こないだもさー、好きな人にウインクしてる動画が欲しいつって、まあ当たり前なんだけど散々渋られて、やっとのことでくれた動画もウインクとか全然関係ない、なんかサッカーのゲームでシュート決めて喜んでる動画で、しかもお前、友達が被って全然見えないじゃん、みたいな、まあその時だよね、白眼ッッ!!! つって、血継限界に覚醒したのは。したっけ友達を透視して好きな人の全貌を見ることができたから、KOKIAの『ありがとう・・・』を聴きながら泣いたし、誰と結婚することになってもこの映像を式場で流そうと決意もしたんだけど、あっそうだ、あとあと、なんか好きな人がだまし絵の美術展? みたいなとこに行った時の写真もくれたんだけど、その写真って飛び出てるように見える天使の絵を好きな人が指差して笑ってる写真で、それ見た時爆笑しちゃった。いや、天使が天使指差してんじゃん、って。ど、ど、どっひゃ〜! そんなに天使はみ出すの〜!? あれれ~!? よく見たらこれ天使じゃなくて好きな人じゃ〜ん! ちょっとちょっと〜! そういう〜! だまし絵ってそういう〜! みたいな、まあそんで、しかも、その写真に写ってた好きな人の髪が編まれててさあ! ほら! 以前!

haine.hatenablog.jp

あの、ところでさ、全然話変わんだけど、旅行の写真あげたじゃん。で、お前最近髪を編んでるらしいじゃん。代わりにその写真くれない? ダメ? ダメなんだ、ふーん。

 って書いてて! 実にあれから四ヶ月! 遂にこの度願いが叶いまして! 雰囲気全然違うじゃ〜ん! お前の髪型ってどのパターンでも可愛いやつなのかよ~! そういう〜! だまし絵ってそういう〜! つって。ひゃ~! オメェすっげえ美人だなぁ! オラといっちょ結婚すっか!? って孫悟空になっちゃった。

 いやでも、たとえ俺が孫悟空になっちゃっても好きな人にとってはマジで関係ないっぽくて、これといった進展も特にないし、なんだろ、冬の気圧配置、みたいな、今のはちょっとたとえがうまくいかなかったからスルーして欲しいんだけど、とにかくそれこそもう奇跡でも起こんない限り、今後とも末永く友達のままお付き合いくださいって感じなわけじゃんか。したっけ俺もちょいとばかし最近は気を抜いてたっつーか、省エネモードみたいなのになってたんだけど、その間にも好きな人はどんどん可愛くなってって、中身はあきれるくらいずっと変わんなくて、ね、どしたの、悪魔と契約した? みたいな、もうほんとおちおちスリープしてる場合じゃねえぞ、っつー。俺だって高校時代は評議員の端くれ、生徒会の末席を汚してた身なんだから、いざという時は舞台上から彼女に向けていつでも「最近仕事が忙しくて、前より話したり遊んだりする時間は少なくなったけど、それでもずっとお前のことが好きだっ!」って宣言しちゃえるくらいのアレでいるつもりだし、もうほんと、あとは奇跡待ち、だけ、みたいな。

アクセス数とやさしさと

 なんか他の人気ブログとかを読んでたら、やれアフィリエイト収入だの、PV数を一ヶ月で○○増やすだの、欝とともに生きてゆく、みたいな、そんなのがメインストリームになってるっぽくて、もちろんそういうブログが悪いとは言わないし、ぜひブログで稼いで欲しいし、欝とともに生きていって欲しいなって思うんだけど、なんだろ、俺があまりそっち方面に興味がないからなのか、だんだん高校の副教科の授業を受けてる時みたいな気分なってきて、結局やめてしまった。

 でもまあもちろん人気ブログだけあって読みやすいし、為になることもたくさんあって「アクセス数を稼ぐには検索流入を増やそう」とか「タイトルだけでアクセス数は一桁変わる」みたいな、なるほどなるほど、つって何気なく自分の検索流入数を見てみたら0%だった。そんなことあるんだ。このブログもそれこそ更新した日には50人くらいの人たちが見に来てくれるようになってて、ほんとにありがたいなって感じなんだけど、検索流入数が0%なら、ここ、限界集落じゃん。読者って外部から切り離されて、なおその村に残ってる独居老人たちだけじゃん。

 しかもタイトルの付け方もさー、こないだタイトルのオンカロの意味がわかりませんでした、って言われて、オンカロっていうのはフィンランドにある核燃料の最終廃棄場所の名前なんですよー、っつーやり取りをしたんだけどさ、そもそもその記事でオンカロの話出てないし、これって最悪じゃない? むしろ検索流入させてる側じゃん。うちの検索流入数-1件なんだけど。

 別になんだろ、アクセス数とかさほど気にしてないし、アフィリエイトとかしてないしさ、そりゃ何も労力をかけなくても良いんなら、見てくれる人が多いに越したことはないだろうけど、そんな気張ってねぇ、って感じだし。じゃあせめてタイトルくらいちゃんとわかりやすくしろよってもんなんだけど、急にさ、ほら、そういう狙ったタイトルにしたら「あ、馴染んだ」って思われんじゃん。癪。すげー癪だわ。そんなこと思われるくらいなら、いや俺アクセス数とかそんなの興味ないンで、こちとらプライド持って限界集落やってんスよ、みたいに嘘と保身で塗り固めていきたい。硬い硬い殻に閉じ籠って、その中で真珠みたいなのをぽこぽこ産み出すだけが良い。

 だからもうね、決めたんだけど、アクセス数アップ的なテクニック? 全部教えるわ。や、全然大丈夫大丈夫。俺ほんとそういうの自分は興味ないし、てかあれ、むしろ嫌いだから。アレルギーあんだよねアクセス数に。もともとここは愛を語る場所だしそれは今も変わらないし、好きな人と付き合った瞬間にウルフルズの『バンザイ』を全文載せて閉鎖するつもりだったから。だからこの記事を見てる人だけに、俺が今まで思い付いたアクセス数アップのリアルを教える。他で書いてるような「毎日更新しよう!」とか「新しい情報にアンテナを張ろう!」みたいなめんどくさいことなんか一つもせずにアクセス数を伸ばすやり方。

 まずね、みんな告知用のSNSとか持ってると思うんだけど、更新してないのに「更新しました!」って自分のブログの適当なURLつけて言っちゃおっか。定期的に。これ、嘘、ってやり方です。嘘って知ってます? あとこれは女の子しか使えないんですけど「ブログのコメントで『ブラジャーのサイズ合ってなくない?』とか言われて恥ずかしくて泣いてる」とか呟いとけば、フォロワーの男×過去記事数のアクセス数が稼げんじゃないかな。男はみんな血眼になって"ない画像"を探すだろうし。え? ダメ? 嘘をつくのはダメなんだ? へえ、政治家はみんな嘘をつくのにね。(いきなり話題を政治にすり替えることで罪の矛先を逸らせる高等テクニック)

 じゃあ、良いです、まだ別のもあるので。ブログはまあ適当に更新してもらって、はい、中身は適当で大丈夫です。みんなが読みたくなるような記事って何なのかっつーと、為になるとか読みやすいとかそんなんじゃないんだよね。結局評価されたり話題になってる記事なんですよ。いやいやいや、それおかしいじゃん、評価されたり話題になってる記事は為になったり面白い記事でしょ、みたいな声が聞こえてくるけど、つまりそのイメージを利用したら良いわけ。

 なんだろ「ネコが寝込んだ」みたいなダジャレを書いた記事を更新した後、ツイッターとかで更新しましたーって報告するじゃんか。その後にツイート検索で「なるほどこれすごいわ RT」とか「笑い過ぎて死ぬ」「今までで一番好き」「意味が分かって鳥肌立った」みたいなのを検索して片っ端からリツイートして行くんですよ。その後に「ブログ続けててよかった」とか呟くと、フォロワーからするともう、え、なになに? どんな記事書いたの? ってことになるわけです。え? いや、はい。嘘はついてないんですけど。普通に更新して、気になるツイートをリツイートして、それとは別にブログを続けててよかったことがあっただけなんですが。

 あとはあれですね、目についた人全員にリプライで「前略 ご無沙汰しておます。この度皆様にお力添えいただき、ついにブログを更新することができました。一度目を通していただけましたら幸甚に存じます」みたいな挨拶を送ると良いかもしんないね。やっぱり礼儀っつーのはかなり大切だから。

 ここまでしたらアクセス数四桁くらいは軽くいってるだろうし、もう最後はタイトルの付け方なんだけど、これはもう好きに自分の願望を書いて、最後に「〜するためのライフハック術 10選」とでもつけとけば絶対に損はしない。「お腹いっぱい唐揚げを食べてそのまま温泉に入って昼過ぎまで寝るためのライフハック術 10選」とか「今すぐ上司を殴りつけて1億円欲しい人のためのライフハック術 10選」みたいなことを書いとけば、そんなのしたくない人居るわけないんだから、みんな読みに来るでしょ。俺なんて一回読みに行って違う内容書かれてたら、あれ? なんか変なページに飛んじゃった? って確認のためにもっかい入り直すよ。この場合アクセス数2ですからね。

 どう? こうやって色々教えたので、もうみんな今すぐ実践したくてうずうずしてると思うんだけどちょっと待って欲しい。今から大事なことを言うから。結局ブログにとって一番大切なのはなんなのかっつーと、文章が読みやすいかどうかなんです。ちなみにふざけてたところからいきなりマトモなことを言うと信憑性が増すっていう、これも高等テクニックのひとつです。

 じゃあ読みやすい文章ってなんだっつーと、シンプルな構成、一文の長さが適切、難しい熟語や専門用語を使わない、みたいな、まあ色々あると思うんだけど、その基準も人それぞれだし、わかりにくい文章を書いてる人は自分がわかりにくい文章を書いてるなんてこれっぽっちも思ってないわけで、そんな風に悩める子羊のためにぴったりのソフトというかアプリがね、あるんすよ。えっ? なになに? 良いって良いって。全然俺こういうノウハウとかをシェアするの、抵抗とかないタイプだし。ただみんなに喜んで欲しいだけだから、さ?

 まあ、それが日本語の苦手な外国人にも理解してもらえる日本語を書けるようにっつーコンセプトの「やんしす」なんだけど、これなにかっつーと、YAsashii Nihongo SIen Systemって名前からも分かる通り、日本語初学者の外国人向けの文章、つまり難しい言葉や表現を指摘してくれるソフトなんです。ちなみにAndroid用のアプリもあります。

 もともと弘前大学が、日本在住の外国人が防災案内とか緊急速報の日本語が理解できない時、たとえば「緊急時はこちらの扉をお使い下さい」みたいなのって理解できるわけないし、したら逃げらんないじゃん。そんな事態を避けるために作られた補助ソフトなんだけど、ま、これ使っとけば、読みにくい文章を書けるはずもないじゃん? 

 まー待って待って。さすがに馬鹿にし過ぎ、みたいな気持ちはこっちもよくわかる。でもこれすっげー楽しいから。違う。為になるから。騙されたと思って使ってみて欲しいんだけど、こう、語彙力の必要性を実感できてドキドキする。なんだろ、自分が日本に来て二年目の黒人になった、みたいな感じになんの。すごくない? 記憶を消さずに自分がセネガル人の留学生だって思い込めるんだよ? 試しに今から「やんしす」がこれなら日本語が下手な外国人でも理解できると認定してくれた文章でブログを書くから。「できるリーダーはやって見せる」ってなんか、人気ブログに書かれてたし。

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 まず「やんしす」を使う上で一番難しいのは言葉の長さです。三十字くらいになると二つにしてと言います。あとは「〜される」のような形で受けたりできません。外国人には難しいからです。こうしていると難しい言葉が多くて驚きます。自分が外国人になったようです。いつもより楽しいです。今から好きな人への気持ちを書きます。

 好きです。毎日好きです。顔が可愛くて心も良いです。一緒にいると楽しくて、今は風邪をひいています。だから心配しています。彼女の変わったはなし方が好きです。特に目が可愛いです。写真をくれないところがだめです。心をほめたいのに言葉がないです。すごくあたたかい人です。優しくはないです。でも言葉が少ないから優しいも入れます。風邪は大丈夫ですか。行きましょうか。早くこっちに帰ってきてください。

 ね。結果的に騙されたわけだけど、今どんな気分かな? あの、いやほんと、こっちもそんなつもり全然なくて。びっくりした。俺、こんなに向いてないの紹介しようとしたんだ、って。まあ、なんだ、こんな感じで、ブログを書くにはマジで向いてないんだけど、知り合いに日本語を勉強中の人が居るとか、彼氏がカタコトの日本語フェチです、みたいな人は、よかったらこの「やんしす」を使ってみてください。俺には一円も入らないんだけど。

眠れ、象、寿司、カスタード。

 こないだミヤタと夜勤明けに夜まで遊んで、そのまま回転寿司へ行ったんだけど、その日がもうあんまり楽しくてお寿司は美味しくて眠たくてってしたもんで、心が満たされきってバグってしまった。あの、なんだろ、この状況って矛盾なわけよ。俺この時気付いたんだけど、人間の三大欲求ってどうやら三竦みの関係になってるっぽくて。食欲は性欲に勝るし、性欲は睡眠欲に勝つ。んで睡眠欲は食欲に勝る。

 ほら、お腹が空いてて、だけど欲求不満の時って、まあ、普通はみんな先にご飯を食べんじゃん。だしなんだろ、男ならあるあるだと思うんだけど、イスラム教徒で言うところのサラート? 祈りの儀式みたいなさ、まあ普通にオナニーのことなんだけど、とにかく死ぬほど眠たいのにアッラーに祈りを捧げる、みたいな夜ってままあるじゃん。あとこれは関係ないんだけど、あとから補足するくらいなら二度と比喩なんか使わないって今心に決めた。

 じゃあ睡眠欲が最弱なのかっつーと、そんなことはなくて、めちゃくちゃ眠たい時ってどう考えてもお腹空いてるはずなのに空腹なんか感じなくない? オデ、サキニメシクウ。ゼンブクウ。みたいな方がこのブログを読んでいるのならちょっと話がややこしくなるし、俺は今人間の話をしてるからってことでご理解頂きたいんだけど、まあとにかくこの三つってどれかが最強ってわけじゃないから、その気になればジャンケンにだって応用できるわけ。

 「性欲!食欲!睡眠欲!」っつージャンケンがスタンダードになった世界、見てみたくねーか? 俺は見たい。その場合俺はもう、今後ずっとジャンケンで「睡眠欲」を出し続けるかんね。なんでかっつーと相手が「性欲」を出してる姿を見たいから。花も恥じらううら若き女の子とジャンケンする時とかは「睡眠欲」を出すよってあらかじめ宣言するし、勝ちたいならお前の「性欲」を見せてみろ、つって。そんで相手が出す恥ずかしそうに指でかたどった「性欲」を見ながら、こう、カアバ神殿の方角に向かって、ね? もう一度言うけど、俺は見たいです。

 まあそれは良いんだけど、何が言いたいのかっつーと、自分に好意を持ってくれてる異性と徹夜明けにご飯を食べるなんて、そんなのその気になれば三大欲求を全て満たせてしまえる状況なわけで、逆説的になるけど、そんな状況下ではどれから満たせば良いのか分からなくなって、結果人の心って結構簡単にバグる。具体的に言うと、何も満たされてないのに全てが満たされたような多幸感に包まれて、根拠のない希望やら万能感がふつふつと湧いてくる。軽く調べてみたらこの現象はちゃんと学術的に証明されていて、過去に三大欲求を全て同時に満たしたとされる、おっぱい飲んでねんねした生き物にあやかって「Raccoon of Mt. Genkotsu Effect(=げんこつ山のたぬきさん効果)」、通称ロン毛と呼ばれているっていうのは完全な嘘だし、じゃあ上のリンクはなんだったんだっつーと行き先はロン毛のGoogle画像検索結果が表示されるだけなんだよね。もうこんなくだらない話はやめて、いい加減寿司屋の話に戻っていいかな? みんなの気持ち少しは考えなよ。

 どこまで話したんだっけ? 今確認しに戻ったら寿司屋の話が何も始まってなくてほんとに目ん玉が飛び出たんだけど、とにかくすげー美味しくて、ほら、駅前によくリニアモーターカーとか新幹線の誘致運動をしてる団体いるじゃん。俺、あれをしようって心に決めた。「食道に寿司レーンを」っつー横断幕を作って、十万人分くらいの署名を集めてスシローの本社に持って行こうって。

 緊張しながら社長室へ入って、ぜひあんたにって思って、と言いながら署名の束を渡すと、社長は何も訊かずに、分かりました、お引き受けしましょう、って言う。当然俺は困惑しながら、え? 俺はまだなにも……って言うんだけど、したら社長は、男がよくよくの事でやってきたとき、矢吹さん、あんたワケを聞いてから引き受けたり断ったりしますかね? つって、まあ、これはあしたのジョーに出てくるゴロマキ権藤なんだけど、寿司に携わってる人間なんて全員粋な江戸っ子なわけでしょ? その場でスシロー発、食道経由、胃着の俺専用路線の開通が決定するはずじゃん。

 もっとも俺がその日食べに行った回転寿司は全然スシローじゃないんだけど。それでも俺の初めて(の人体改造)を捧げるならやっぱりスシローが良いって思うし、なんだろ、その行った寿司屋って一皿百円の寿司屋じゃなくて、皿によってランクがあってウニとかが乗ってる黒い皿だと五百円くらいするタイプの回転寿司で、それが流れてくるたびにスシローなら炙りチーズサーモン五皿食べれんじゃんみたいなことしか考えてなかったくらいスシローが好きだし、男の子は好きな子のためなら食道を寿司レーンにだって出来ちゃうんだゾ……? って。

 あ、そうだ。なんか、その回転寿司屋はお皿をICチップで管理してて、ある程度時間が経ったお皿は自動的に廃棄レーンへと流れてくんだけど、こう、その先が"無"になってて、ガコンッて皿が落とされてく仕組みになってたのよ。気付かなかっただけで他のチェーン店もそうなのかもしんないけど、そんでその"無"が偶然俺らの座った席のちょうど真横にあって、俺そんな光景を初めて見たもんだから、その"無"を見たときに、これなに? 象の墓場? つった。ほら、象って死に際になると仲間のもとから離れて一人で死に場所へと向かう、みたいな話があんじゃん。あれが過ぎった。これ、それの寿司バージョンじゃん、って。

 なんかそれが面白くてずっと見てたら途中からだんだん悲しくなってきちゃって、なんなんだろ、まだまだ美味しそうな寿司がきゃっきゃっと和気あいあい向こうから流れてくんのに、直前で廃棄レーンに振り分けられた瞬間、こっちとしては「あ、この寿司死ぬんだ」ってわかるわけで。案の定、次の瞬間にはガコンッて"無"に落ちる。こんなの強制的に死神の目を契約させられた人しか味わえなくない? それだけじゃなくて、こう、なんか普通に罪悪感もあるし、なに、廃棄レーンに入った瞬間にその皿を手に取れば救えるはずの命なんだから、実質俺が見殺しにした、みたいなさ、そんな感じの目を周りの席とか板前からも向けられるわけ。

 しかもそんな惨殺が行われてる横で、ほら、男女で夜にシースーつったらもうそれは前戯みたいなわけで、うちつぶ貝が好きなのコリコリしてて、とか、僕のいなり寿司を見てごらん、みたいな、子供には聞かせられないような比喩を用いた、夜のね、なんつーのかな、セクシャルな会話をしてるわけじゃんか。でもリアルな死が真横にあんの。そんなのって狂った金持ちだけじゃない? カイジじゃないんだからさ。

 横から絶えずガコンッガコンッつー音がしてるし、なんだろ、同じネタが連続で"無"に落とされて行くときなんか、この後どうする?(ガコンッ)まだ時間早いし(ガコンッ)どっか(ガコンッ)行こっか(ガコンッ)みたいな。きれいに裏拍。さすがにそれは嘘だし、今から書くのも嘘なんだけど、あー、俺この光景を死後に閻魔大王から見せられるんだろうな、ってそれ聞きながら思ったからね。これ指摘されたら何も言えねーって。

 その者。お前は生前に罪を犯したか? い、いえ! 私めは正直に慎ましく暮らしておりました! ふむ、確かめてみよう、この鏡は浄玻璃鏡と言ってお前が犯した罪が映し出されるのだ。見よ。つって、こう、おそろおそるその鏡を覗くと、二十代前半の男が笑いながら女を口説いてるすぐ横で寿司が無限に捨てられてゆく様子が映し出されてて。そんなの閻魔が見たら絶対に怒り狂って舌を抜かれるじゃん。なんたる業! 口を開けい! とかなんとか言って。

 俺も震え上がりながら口を開けるんだけど、でも閻魔は舌を抜こうとせず、俺の口を見て……なんだその口は? と訪ねてくるわけ。俺はここぞとばかりに、こ、こちらは寿司レーンでございます。二度とこんな光景を見たくないと思い、私めの食道を寿司レーンに改造いたしました、つって。閻魔にもがーはっはっ! こりゃ参った! 粋よ粋よのう! みたいな感じですげー気に入られて、こっちも、あ、怖そうな見た目だけど案外良い人なんだ、みたいな。

 まあ嘘の話なんでこれくらいでやめるんだけど。ほんとはこの後、「メチャクチャ厳しい人たちが不意に見せた優しさのせいだったりするんだろうね。ア・リ・ガ・ト・ゴ・ザ・イ・ます!」とか書いて、そのまま魔界トーナメント編を書き進めてたんだけど全部消した。本当に面白くなかったし。

 で、まあ、その後時間あるしってことで、ミヤタが一回行きたいみたいなことを前に言ってた有名なケーキ屋さんの話を思い出して、時間あるしそこ行ってみよっか、みたいになったんだけど、ハロウィンのお菓子が発売開始してて今多分かなり並ぶよ? 甘いの苦手でしょ? 的な気遣いをしてくれて、でももうなに、尻尾がついてたらぶんぶん振り回してんだろうなっつーくらいに目はキラキラしてるし、んーどうしようかな……まあこっから近いけど……シュークリーム食べてみたいけど……みたいな、悩んでる振りしながら行く理由ばっか並べてて、大丈夫大丈夫興味あるし、つってケーキ屋さんに行って、どれくらいだろ、結局八年くらい? そんくらい並んだ。よく覚えてないけど。

 それでなんか店に入ったら、色々なケーキやら焼き菓子やらおばけの形をしたチョコみたいなのとかそういう、こう、Instagram、みたいなラインナップのスイーツをミヤタが一つずつ褒めて周るっつーよく分かんないコーナーが始まったり、猫の容器に入ったムースとジャック・オ・ランタンをかたどったモンブランとハロウィンの焼き菓子セットのどれを買うかみたいなのでA級棋士並の長考を見せつけてきたりして、やっと決まったと思ったら、あ、お母さんにも買って帰ろうっと! 食べたいのラインで聞いてみる! みたいな、こいつ躊躇わねえな、とか思いながら、もう既に四十回くらい読んだ「産地のこだわり」みたいなポップを読み返しながら、もう二度と来ねえと心に誓った。

 帰り道、別の袋に入れてもらった念願だったらしいシュークリームをミヤタが袋から取り出して、一人で食べりゃ良いのにわざわざ半分に割ってくれようとして、良いよ良いよ一人で食べな、えーせっかくだしさ、とかやりながら割る過程でシューの中のクリームがほとんど包み紙の下の三角形っつーの? そん中に落ちてって、なんだろ、ボディクリームを塗った汚え膝、みたいに成り下がった物体を渡されて二人で分けて食べた。なんかぼにゅぼにゅするね、とか言いながら。

 その後も名残惜しそうにミヤタが袋の中をチラチラ見ながら、この三角ポケット吸ったら引く? とか聞いてきて、俺は、絶対にダメ。そのクリームはもう死んでる。つって、そっか、ここはクリームの墓場なんだ、みたいな、でもごめんね私は吸うからって、えっ嘘、と思って振り向いたら、墓荒らしが居ました。あーそれ絶対死後に閻魔から見せられるやつだよ。

太陽に罰が当たれ

 こんなブログも記事数が二十を超えて、文字数で言うとだいたい十万字くらい、気が付いたら一冊の文庫本になっちゃうくらいの文量になってるわけなんだけど、そろそろ第一巻も終わるっつーのになんにもイベントが起こらねーのな。恋はスリル、ショック、サスペンスっつーのがマジなら、ここ最近起こった恋愛イベントなんて北朝鮮が打ちまくってるミサイルくらいなんだけどマジで。

 ほら、いわゆるクリフハンガーっていうのかな、最終話のラストで突然主人公が倒れたり、巻末で新キャラが登場したりみたいなさ、そういう「引き」の手法ってよく使われるわけじゃん。続編を匂わせるための。

 たとえば『ONE PIECE』の第一巻の最後では、新登場のナミがルフィ相手に「(私と)手を組まない?」と言うシーンで終わるし、『NARUTO』では鈴を取れなかったナルト、サスケ、サクラの三人が、カカシ先生から「三人とも忍者やめろ」と言われる衝撃のラストで第二巻へと続くわけで、物語の終盤っつーのは何か事件が起こるには絶好の機会。

 なのにこのブログでは三ヶ月が経って、ドラマで言えば一クール目が終わる最終回、ラノベで言えば一冊目のラスト数ページ、もうここしかないだろっつータイミングなのに、ヘリコプターで好きな人を拉致するのが最善である、だの、高熱出して人間不信になりました、とかなんだの言って終わろうとしている。そんなラブストーリー見たことある? 『君に届け』とか俺は読んでないんだけど、一巻の最後で、黒沼爽子が風早くんのことをヘリコプターで拉致とかしてた? してるわけないんだよ。

 いや、別に付き合ってくれとかそんなことを言ってるわけじゃない。それはほら、十二巻くらいで全然いいし、じゃなくてこう、好きな人が俺の家に居候することになる、みたいな、そんくらいのイベントはあっても良いんじゃねーの? なあ神? お前に言ってんだけど。他人事みたいな振りするなよ。

 たとえば仕事から帰ってきたら風呂上がりの彼女がいて、よっ! 少年っ! お風呂借りてるよーっ! つってさ。まあ、もうこのキャラクターにはもはや俺の好きな人の要素は微塵も残されてないんだけど、ちょ! ちょっとせんぱぁい〜! つって全力で乗っかる。実際には後輩なんだけど。でも、現実として好きな人がそうなってるんだから、そんなのもう瑣末な問題じゃん。

 したっけ彼女も、ねねっ、二、三日あたしのこと泊めてくれないかなっ? いやあ〜大家さんに家追い出されちゃってさ〜にゃはは〜、みたいな、その代わり手料理振る舞ってあげるからっ! ねっ、少年っ! それとも少年には、こっちの方が良かったかな……? 的なことを言いながら、ニヤニヤと胸に巻いてあるバスタオルをほどこうとしたりして、それを見た俺は顔を真っ赤にしながら、とにかく服を着てくださぁ〜〜〜い!!! って叫んで、こう、家がその声で揺れて、屋根に止まってた鳥とかも一斉に飛んで、そんで一巻が終わる。なんだこれ。地獄で読まれてるラノベじゃん。

 まあ、そんな話は本当にどうでも良くて、あの、実は過去記事の内容を少しだけこっそり変えました。なんか、いい機会だと思って自分の過去記事をいくつか読み返してたんだけど、ある記事の中で『北風と太陽』を引用してて。そんで何気なくネットで『北風と太陽』を読み返してみたら、俺、どうやら勘違いして教訓を受け取っていたようです。

 あ、もし、ネタバレが嫌な人はこれ以降は読まないでくださいね。「あーもうほんと最悪。観るの楽しみにしてたのに『北風と太陽』のネタバレされた。無理。リスカ止まらない」つって怒られるのはこっちも本当に嫌だし。で、なんだ、検索して最初にヒットするページが北風と太陽の教訓とあらすじ【人を動かす文章とは?】なんだけど、ここに載ってるあらすじを簡単にまとめると、

  • [起]北風と太陽が「どちらが旅人の服を脱がせられるか」勝負をする。
  • [承]北風が冷たい風を吹きまくると旅人は服をしっかりと着直してしまう。
  • [転]太陽が照りつけると旅人は汗ばみはじめ、やがて服を脱いで川へ飛び込んだ。
  • [結]北風のように強引に自分のして欲しいことを相手に押し付けるのではなく、太陽のように相手の気持ちを考えてポカポカと照らしてあげると自ずと相手は動いてくれる。

 って感じで。なんかあまりにも堂々と言われるもんだから、なるほどそんなもんか、ってこっちも思っちゃってたんだけど、これめちゃくちゃなこと言ってない? 起承転結の全部が間違ってるじゃん。

 まず[起]なんだけど、「北風」と「太陽」って比較がそもそも間違ってる。いや、別に、格が違い過ぎる、とか、天体と現象を比べるのは理不尽だ、みたいなことを言いたいんじゃなくて。これって本来は「何かの存在」が「北風」を吹くvs「太陽」が「日光」で照らす、の闘いじゃんか。つまりタイトルは『北風と日光』か『何かの存在と太陽』のどちらかで初めてイーブン、対等な勝負になるわけで。そこで絵本のイラストとかを確認してみると、ほとんどが、口から北風を吹き出している顔のある雲(何かの存在)と、周りから光線(日光)みたいなのを出している顔のある太陽が言い合いをしてるんだけど、つまり勝負の主体としてのタイトルは『何かの存在と太陽』が正しいはず。それじゃあこの北風を生み出す親玉は何かっつーと、様々な学術書や論文を読み、数々の気象学者と議論を重ね、最後にWikipediaを参照することで遂に同定することができました。シベリア気団。正しいタイトルはシベリア気団と太陽』です。

 さて、ここからやっとシベリア気団と太陽の勝負である[承]のパートが始まるんだけど。シベリア気団が、初めは僕の番だ! つって、びゅーびゅーと北風を吹くのに旅人は服を脱がない、ってくだりね。いや、ちょっと待って。太陽、シベリア気団のターンなのにずっとお前照らしてるじゃん。これは絶対にズルくない? 日光、止めるべきでしょ。だって、太陽のターンには北風吹いてないんだし。

 公平を期すためには太陽がなく日本上空にシベリア気団が現れた状況と、シベリア気団がなく太陽が照りつける状態っつーパターンにするべきじゃん。まあ、そのフェアな状態でスタートすると、全球凍結はもう、確定じゃん。旅人は重ね着することで凌ごうとしたみたいだけど、外気が摂氏-200度くらいになる上にシベリア気団もあるからね。旅人は確実に死ぬと思う。太陽はどのパターンの話でも後攻なので、死んだ旅人の服を脱がすことは出来ないはずなんですよ。つまりこの時点で最悪引き分け、万が一旅人の体温調節機能がバグって服を脱いでくれたら勝ちまである。雪山ってそういうこともあるみたいだし。

 やっと[転]です。死んじゃったら話が進まないから、百歩譲って旅人はほぼ絶対零度大寒波が吹き荒れる中を、本文通り、服をもう一枚重ね着することで凌ぎきったってことでいいよ。その後に太陽がポカポカと照って、暑くなった旅人は服を脱いで川へ飛び込びましたっつー流れ。いくらなんでも暑さに対しての反応がやり過ぎでしょ。今までそんな状況になったことある? こりゃたまらん! つって外出先で川に飛び込んだこと。そんなのサウナのあとの水風呂だけだよ。つーことはだよ、この時の気温って90度前後だと思うんだけど、普通に引く。太陽の大人気のなさにさすがに引く。そんな風に強引に脱がせようとしてもダメだよ、みたいな顔しながら、お前もゴッリゴリの力技じゃん。

 つーか旅人もさ、寒さにはあんなにも強かったのに暑さに対して弱過ぎない? 摂氏-200度を、なんて寒いんだ、とか馬鹿みたいなこと言って服を着直すだけのやつが、サウナ程度の気温で川に飛び込む? もっとも旅人が本当にやべー奴だったって可能性もあるけど。地表の温度が太陽の表面温度と同じ6000度になっちゃってるんだけど、こりゃたまらん! で済ませてるってパターン。その場合は服を脱いだっつーよりも、蒸発したって表現が正しいし、川も干上がってるだろうけど。

 で、最後に[結]の部分。原典がイソップ寓話だけに結論は教訓になるんだけど、さっきも言った通り、どっちも馬鹿パワータイプなんだよね。間違っても本来の「柔よく剛を制す」みたいな話じゃなくて、仮に気温を高くすることで服を脱がせることに成功したんなら、これは単なる「物事には相性がある」くらいの話で。しかもなんだろ、都合よく「冷たい」だの「ポカポカと暖かく」みたいな対比を入れ込むことで安易な印象論に誘導してるんだけど、これは別に心の暖かさじゃなくて、普通に気温の話だから。北風は心が冷たくて強引なやり方、太陽は心が暖かくて自然に相手をその気にさせるやり方みたいな話みたいになってるけど。

 ヤクザの下っ端は喧嘩っ早いけど、親分は心が広くて堅気には決して手を出さない、みたいに話がすり替えられてるけど、直接殺すか自殺に追い込むかくらいの違いしかないからね。ほら、ウシジマくんのヤンキーくん編で最後、愛沢が滑川に生命保険をかけられて道路に飛び込むことを強要されたシーンがあったと思うんだけど、あれが太陽のやり方だから。こんな時にしか役立たない教訓じゃん。つーことで以前書いた『北風と太陽』の記述を少しだけ変更しました。不適切だから。よろしくお願いします。

 いや、でも、旅人からしたら本当にたまったもんじゃないよね。突然なんの前触れもなく大寒波と灼熱地獄に襲われて、しかもその様子を観察されながら、ね? 物事にはやり方があるっしょ? なーんていい風の話にまとめられてさ。俺がもし目の前でそんな旅人を見つけたら、きっと顔を真っ赤にしながら、とにかく服を着てくださぁ〜〜〜い!!! って叫んで、あの、やっぱり一巻の終わりってこうなっちゃいません?

 

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気は病から

 サルモネラ菌の食中毒で四十度くらいの高熱が二、三日続いて、このまま世界が終わってくれ、などと世のすべてを憎々しく思ってる時に、そんなこと一切言ってないのに会社の人から、欲求不満なら代わりに彼女になったげる笑笑、みたいなボケカスな告白をされて、はあ? 舐めてんのか? とか思ってたら、普通には言えなかったけど好きなのはホントだよ、みたいなことを最後に言われて、ほんとふざけんじゃねーぞ、なあに真実の愛みてーな顔して言ってんだよ、よくそこで一回ふざけられたな、そんなのが愛ならばいっそ永久(とわ)に眠ろうか……つって、本当の本当に世界が終わってしまった。

 もうさー、毎日絶食だし、ずっと続く悪寒のせいで全身筋肉痛、毎晩赤犬に「なんじゃァおどれは……」と殴り殺される夢を見て、何かを口にした途端全て吐く、みたいなさ、散々な日々だったのよ。欲求不満どころか下がらない熱だけがやつれ切った心さえも壊してたからね。まさか俺の口、食事のやり方忘れたんじゃねーの? みたいな、そんなとこまで疑ってた。なあ一応確認なんだけど水分補給って口に入れたら終わりじゃないんだけど大丈夫? 飲み込むって覚えてる? と訝しげに水やらポカリスエットを飲むんだけど、口も最初はおいしーおいしーって受け入れるのに、少ししたら思い出したようにだーーって全部吐き出す。

 不信感しかない。どうすんだよこの空気、みたいな。お前一人勝手なことするからみんな迷惑してんじゃん。しかも吐くのってめっちゃくちゃ苦しいから、全身にびっしょりと汗かくし、いや、そこまでして水分を外に出したい動機はなに? みたいな。

 水分補給も満足にできないし、仕方がないから病院で点滴することになって、したら病院にあったいくつかのベッドには自分と同じように水を飲むことが下手な生き物たちが腕から強制的に水を飲まされてて、俺もうそいつらの姿があんまりに情けなくって、自分もこれからそいつらの一員になるんだって考えたら悔しくてこっそり泣いた。こんなの尊厳ある人間の姿じゃねーよ、殺してくれ殺してくれって。

 んでもやっぱ点滴ってすげーもんで、終わる頃には随分と気持ちも楽になって、なんだ、病院で処方箋を貰って横の薬局に薬を受け取りに行った時、レジの横に飴ちゃんが置いてあったんだけど、なんとなく一つ食べてみようっつー気持ちになれるくらい元気になったんだよね。したっけミルクキャンディみたいなのを取って食べたんだけど、当たり前のように吐いた。また一つ世界への不信が募る。

 まあ今思い返すと、水で吐くんだからミルクキャンディは普通に自業自得なんだけど。でもあれ、病院だし人前だしって色んなことが頭ん中で吐く寸前にリフレインして、最後の力を振り絞って吐き気に抗おうとした結果、すっげー小さく吐くみたいな感じになった。なんだろ、赤ちゃんってすぐ吐くじゃん、ミルクとか。あんな感じのゲロだった。食べてたのもミルクキャンディだし、なんつーのかな、ビジュアル的には赤ちゃんそのものみたいな、愛らしさが全面に出てるような吐き仕草。汚い話でごめんね。けど俺が意識が朦朧とするような高熱の中、他人様に迷惑をかけまいと必死に耐えた結果、赤ちゃんになっちゃった時の気持ちを少しでいいから想像してほしい。あの瞬間、たしかに俺は世界で独りぼっちだったよ。

 薬剤師のおばちゃんも百七十センチ後半の男が赤ちゃんみたいなゲロを吐いてるギャップにやられたのか、ひっくり返って飛び出してきて、あらあら〜大丈夫だったよ〜大丈夫だったよ〜つって、パニックになりながら何故か過去形で断定されて、最初は過去形の断定で慰められるのって意味不明だったんだけど、これ信頼感がすげえのな。あ、この人の中では本当に終わったこととして処理されてるんだ、っつー。俺、独りじゃなかったんだ、ってそんなことを考えながら、おばちゃんに背中をさすられてトイレへと連れてかれて、口が気持ち悪かったらこれ使って〜、と妙に厚手の紙コップまでくれて、ありがてえありがてえって使わせて貰ったんだけど、ひょっとするとこれ検尿用の紙コップかもしんない、っつー考えが頭をよぎる。俺の目からハイライトが消えた瞬間。

 口をゆすいでしばらく休んでトイレから出て、普段の俺だったら、おかげでラクになったわい! お礼にこのひでんマシン01をあげよう! ガッハッハ! なんつー楽しいやり取りで場を和ませるんだけど、当然そんな余裕も信頼関係もそこにはなくて、挙動不審に周りをキョロキョロ伺いながら薬を受け取って、そんなこんなで一週間くらいかかってやっと腸炎が完治したんだけどさ。その頃には完全に心を閉ざしてた。

 やっとこさ会社へ戻って、大丈夫? しんどくない? とみんなが心配そうに、でも明るく出迎えてくれたんだけど、俺は仕事に穴を開けた申し訳なさやら病み上がりのしんどさやらで、あれだけ明るくて人懐っこい俺が「ア、ハイ」だの「ウッス」しか言わないもんだから、周りも俺がアフガン帰りで性格が変わってしまった元米兵みたいな感じでよそよそしくなってきて、今はそっとしておいてあげましょう、彼は今も戦っているのよ、的な。

 そんな中、復帰祝いに飲みに行くぞー! 野郎ども宴だー! とルフィみてーなノリの上司に飲みに連れて行ってもらって、俺もそのおかげでだんだんと楽しくなってきて、捨てたもんじゃねーな人間、みたいな。なんだかぽかぽかする……これは……? と目にもハイライトが戻ってきて、まあ心の方は置いといて体調の方はもともとばっちり万全だから、日本昔話みたいな盛り方をされたご飯ももぐもぐ食べられるようになってて、絶好調! 真冬の恋! っつー感じでスピードに乗ってビールやら焼酎やらをガブガブ飲んでて、そんなのを一時間も続けてると、見事にブレイク寸前、幸せへのゴール。あ、やばい、これ吐く時のあれだ。俺ももうそれ以上飲まなきゃいいのに、こうなんだろ、これまでの飲酒を急に止めることでバランスが崩れて吐いてしまうことが怖いというか、そういうのってあるじゃん。たとえば坂道を自転車で下ってて、想定以上のスピードになっても変になって転ぶのが嫌だから全力でブレーキかけられない、みたいな。

 んでトイレに駆け込んで吐いてたんだけどさ、一通り吐き終わったあとのロスタイムみたいな時間に、こう、便器と円陣組んでる感じで、ああ辛いなぁ辛いなぁと、ふと壁を見上げたら、怪我と災は恥と思え、だの、人の苦労を助けてやれ、だの書いてて。親父の小言。それ今言うことかよ。

  何をしてもうまくいかねーし、治ったのに満足に食事もできない、あらゆるものが俺を責め立ててるようなみじめな気持ちになって、二次会も断って電車で一人家へ帰ろうとしたら、怖えもんなしかよっつーおっさんが電車の中でざる蕎麦を食ってた。ああ、俺は生物としてこのおっさん以下なのか。まるで世の中にある悪意と歯車がカチッと噛み合ってるみたいに、自分の意思とか気持ちに関係なく周りの悪意のまま自分の気持ちが動かされて引っ張られるようにくるくる空回りする。

 ほんっとにサルモネラ菌だけは気を付けたほうが良い。これまで散々、愛が全部、最後に愛は勝つ、とここで言ってきたけど、頂(いただき)にはサルモネラ菌がいたわ。ちゃんと愛だの友情だのそんな絵空事を語る前に現実のサルモネラ菌の怖さに向き合うべきだと思う。医者曰く、普通に子供とかなら死んでもおかしくないらしいし。俺は幸い成人男性だから子供の約十倍くらいは免疫力があるみたいで三日間、四十度程度の熱で済んだけど、これで行くと、子供だったら一ヶ月間、四百度の熱が出てもおかしくないかんね。それはもうピザ窯だよ。

 なんかよくフィクションとかでさ、愛の力で難病を克服するみたいなのがあるけど、あれぜってー嘘だと思ったもん。普通にそんな余力ないし。無力。明確な死の前では愛は無力。こう、なんだろ、心の中にあるエネルギーっつーのかな、あれって全然有限のもので、肺活量みたいに個々でその総量って決まってるんだと思うのね。それを自分が大切だと思うものに振り分けるわけなんだけど、まあ、だからと言って常に百パーセント使ってるわけじゃなくて、たとえば仕事のストレスに負けないために三十、好きな人を思う気持ちへ二十、周りの空気に合わせてうまく作り笑いするために十、みたいな風にメモリを割り振っていて、たまに緊急事態が発生してもトントンとその場で軽くジャンプすることで、心の中にすき間を作って、よし今夜は徹夜で頑張ろう、みたいな、そういうことが可能になるわけなんだけど、サルモネラ菌から心を守るためには普通に百二十パーセントの力が必要だからね。健康じゃないと本当に何も手につかない。命あっての物種って言葉を噛み締めて、気を引き締めながら九月も変わらずに頑張ろうっつー感じで。さすがにブログももう少しね、特に何もないんだけど。

 まあそんなこんなで恋の季節の後半戦は見事にフルスイングしてたわけなんだけど、あれだね、気が付くと夜なんかは随分と涼しくなってきて、今日食べた秋刀魚もすっごく美味しくて、どんどんと夏の中に秋らしさみたいなものが含まれはじめたね。特に状況も環境も変わっていないのに、そんなことはお構いなしに時間だけが過ぎていってることになんだか不思議な気分になるんだけど、なんつーか、不思議な気分って言ったら、あの、さっきからかなり腹痛がひどくって、そろそろ限界ッスって感じなんだけど、ほんと軽い気持ちで「秋刀魚 腹痛」って調べたら、サンマの季節にご用心☆意外と多い「アニサキス」に気をつけて!! っつーページが出てきて、今もう本当に、投げ捨てられた空きカンのようだ。

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勇気のカタチ

 僕がこうじ君からその手紙を受け取ったのは、ペナントレース真っ只中の八月のことだった。

「大すきな山本せん手へ

 ぼくはこんど、手じゅつをしなければなりません。しないと命がたすからないからです。だけどこわくって、一ど手じゅつの日ににげてしまいました。かんごふさんやおやにとてもおこられました。ぼくも本当は山本せん手みたいにかっこう良くてつよいやきゅうせん手になりたかったです。だけどだめでした。だからせめて大切な手じゅつからにげないような人になりたいです。そして、ちゃんとした大人になりたいです。毎日応えんしています。また手がみをおくります。 むら山こうじ」

 病気のせいか緊張のせいなのか、少し震えた文字で綴られた短い手紙を読んだとき、僕はこうじ君をどうにか勇気付けてあげたいと思った。こんなの結局はありふれた話なのかもしれない。もしかすると、僕のファンの中には手紙を送ることさえ出来ないでいる人たちもいるかもしれないし、何かすることで僕のことを偽善者だと笑う人が現れるかもしれない。だけど何の因果かこの手紙を読んだ以上、僕にとっては、そして夢を与える仕事であるプロ野球選手にとっては、しなければならないことがあるような気がした。

 次のオフの日、無理やり時間を作って手紙に書かれていた病院へと車を走らせた。受付で自分の名前を名乗り、むらやまこうじ君をお願いします、と言おうとした時、後ろから「え!! 山本せん手!?」という大きな声が聞こえてきた。

 ばたばたと駆け寄ってくるこうじ君に、近くにいた厳格そうな看護師が、院内を走らないでください、とたしなめながらも、それでもこうじ君はそんな声など少しも聞こえない様子で嬉しそうに「ぼ、ぼく! むらやまです! むらやまこうじです!」と言った。

 呆れたような、諦めたような表情の看護師や医療事務の人たちに頭を下げながら、とりあえず場所を移そうか、と提案する。

 「こっちにイスがある! こっちこっち!」

 こうじ君に腕を引っ張られるままに着いて行くと、自動販売機といくつかのイスだけがある簡易の休憩所に到着した。

「どうして山本せん手がこんなところにいるの!? からだこわしちゃったの!?」

 休憩所に着くや否や、矢継ぎ早に質問をしてくるこうじ君に少し苦笑いを浮かべながらも、話の本題に入る。

「こうじ君が書いてくれた手紙を読んで来たんだよ。手術が怖いんだって?」

「う、うん」

 こうじ君の声のトーンが少し下がる。どうやらまだ手術をする決心はついていないらしい。

「怖いのかい?」

「うん。しっぱいしたらしんじゃうかもって」

「でも手術をしないと助からないんだよ?」

「だけど……山本せん手はこわくないの?」

「試合が、かい?」

「うん。三しんしたらチームが負けちゃうときとか」

「そりゃ僕だって怖いさ。いつも怖いんだよ。だけど力一杯振ることにしているんだ」

「どうして?」

「振らなかったら三振になっちゃうからね」

 こうじ君は目からウロコが落ちたみたいに目をぱちぱちとしながら、ふらなかったら三しんになる、ふらなかったら三しんになる、と何度か繰り返して、やがてけらけらと身体をくの字に折って笑い始めた。この時だけは、こうじ君がなんの変哲もないただの少年のように見えた。

「そうだよね。ふらなくてもけっきょく三しんなら、ふらないとそんだよね。そん」

「そうだよ。少しは勇気が出たかい?」

「うん! でもやっぱり……」

「それじゃあこうしよう。明日僕は思いっきりバットを振ってホームランを打つ。そしたらこうじ君も手術を頑張る。どうだい?」

「うん! わかった! それならぼく、がんばる!」

 先ほどまでの不安なんてまるで嘘だったみたいに目をキラキラさせるこうじ君はそれからしばらく他愛のない話をした後、やって来た看護師に連れられて診察室へと戻って行った。その道中、何度も僕の方を振り返ってはぶんぶんと音がなりそうなくらい手を振りながら。

 病院からの帰り道、ずっとこうじ君のことを考えていた。まるで病気なんて患ってないような、一人の純粋な野球少年の目をしていた。あの頃プロ野球選手を夢見ていた小学生の僕と、まるで同じ目だった。それが嬉しくて、同時に悲しかった。

 こうじ君だって本当は怖いはずなのに、あんなにも目をキラキラとさせて明るく振る舞い、そして夢を諦めながらも、なんとか自分を奮い立たせて手術に挑もうと決意した。僕はこれまで情熱を持って野球を続けてきたし、模範的ではないにせよ、チームとファンのことを一番に考えて正しい選手であろうと努力してきたつもりだ。それでもこうじ君のような強さが自分にあるのかと自問すると、答えられなかった。

「勇気付けるつもりが逆に教えられてしまったな……」

 自嘲気味にそう呟くと、思考を切り替えるように明日の試合でなんとしてもホームランを打つと固く決意した。

 翌日の試合は長く膠着状態が続いた。一回の表に相手チームが一点を取り、二回の裏にうちのチームがその一点を取り返したあとは、お互い一歩も譲らない展開が続いてついに一対一の同点で九回裏を迎えた。

 二死、走者なし。

 まるで用意されたようなシチュエーションで僕に打順が回ってきた。今日の成績はこれまで三打席無安打。ゆっくりとバッターボックスへと入り、遠くにあるスタンドを確認する。こんなにも晴れ晴れと、そして高揚している自分は随分と久し振りだった。あるいは初めてプロの打席に立った時以来かもしれない。

 柄にもなくバットをスタンドに向けて真っ直ぐ掲げる。それに応えるように、観客からはバットが震えるくらいの歓声が返ってきて、その時初めてバットが震えているのは歓声ではなく、自分の身体が原因なんだと気が付いた。それが武者震いなのか恐怖なのかは分からない。だけど僕は悪くないと思った。

 しっかりとバットを握り直して、ピッチャーに集中する。こうじ君。僕だって本当は逃げ出したいくらい怖いんだ。だけど、そんな時ほど力強くバットを振ることにしている。だって――

 「ヒーローインタビューです。お待たせいたしました。本日は、見事ホームラン宣言後にサヨナラ本塁打を放った山本選手にお越しいただいております!」

 割れんばかりの歓声が轟く中、お立ち台でファンとカメラの向こうに居るであろうこうじ君に向かって手を振る。

「最後の打席、普段の山本選手からは想像もできないようなホームラン宣言の後、見事ホームランを打ちました。あれにはどういった意味があったのでしょうか?」

「実は今日の試合は僕の大切なファンとの約束がありました。そのファンはこうじ君といって、近々大変難しい手術に挑む予定です。そんなファンの一人一人に、少しでも勇気を与えられたら、という一心でバットを振りました」

「そうでしたか。それではそのこうじ君に何か一言かけてあげてください」

 すうっと静かに深呼吸する。こうじ君。僕だって本当は逃げ出したいくらい怖いんだ。だけど、そんな時ほど力強くバットを振ることにしている。だって――

「怖くてもバットを振らなきゃ三振になるぞ!!!! 絶対に負けるな!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

登場人物紹介

山本選手(32)プロ野球選手

村山浩司(58)外科医

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まどろめ葉月

 早く冬こねーかな、とかそんなことを考えながらも、世間はまだまだ今からが夏本番っつーくらいの勢いで。ままならねーな。夏はあんまり好きな人との思い出がないもんだからイマイチ楽しくないというか、乗り切れない。なんかそれが原因なのかわかんないんだけど、最近、好きな人の子供と俺の子供が結婚してくれたらそれはそれでありなんじゃねーのか、とか、ひょっとしてこれ相手の彼氏が浮気してくれたら綺麗に辻褄が合うんじゃねーの? みたいな、まさか人はここまで他人任せな片思いができるのか、っつー心境に達しちゃってるわけなんだけど、あー、彼氏しねーかな、浮気。もうお前頼みだよ。こうさ、好きな人の弱みにつけ込みたいとかそんなんじゃねーんだけど、それが一番違和感がないんじゃねーかなー、っつー。

 なんかたとえば、彼氏が他に好きな人を作ってさ、俺の好きな人に別れを切り出すとするじゃん。したら好きな人はその帰り道、駅のホームで俺に電話を掛けてきて、すっげー投げやりな感じで落ち込むわけ。男なんて結局みんなそうなんだよ、とか、裏切られるくらいなら最初っから何もいらない、なんて、そのうち相手は泣き疲れてそのまま眠ちゃって、ハッと目が覚めたら何故か知らない俺の部屋にいて。そこで突然、俺からの着信があるわけ。意味がわかんないまま電話をとると俺は、あ、起きた? さっき俺、駅で泣いてる捨て猫を見つけたから拾ってきたんだよね、なんて言いながら、その部屋に入ってくるわけ。どう? 地獄を見てる感想は。

 いやでも実際最高だと思うんだよね、これ。ただ、この最高と思える作戦にも問題が一つだけあって。え? はい。一つだけですが。こちら側の資料を何回確認しても問題点は一つだけってなってますけど? なんでみんなの表情が「問題が一つだけ」で固まってんのかよく分かんないし、それがどんな理由であろうと我が崇高な目的の前では全く関係はないんだけど、問題は俺と好きな人の住んでる場所がとんでもなく遠くって、ざっと車で八時間かかるってこと。

 そうなると当然好きな人には駅のホームで八時間近く寝てもらう必要があんだけど、それはもう、人の終(つい)の状況じゃん。しかもシチュエーションの都合上、気付かれない間に自分ん家に戻んなきゃならないわけで、往復で考えると十六時間。いくらなんでもその間寝続けてるっつーのは考えらんないし、まあ、彼氏が別れ話の最中になぜか睡眠薬を盛るっつーファインプレーをしたらあり得るかもしんないけど、そこまで頼めんの? みたいな。あ、いけるっぽい? じゃあ自分それにします。そのコースで。あー、彼氏、浮気して別れ話中に睡眠薬盛ってくんねーかなー。

 まあでも当然こっちとしても全て彼氏任せじゃなくて万全を期する必要はあって、いくら睡眠薬つっても十六時間はリスクが高い。個人差とかもあるだろうし、個人差で言うなら俺の好きな人は絶対そういうのに鈍感なタイプだから。そんなこんなで色々と方法を探してたら、なんとヘリコプターなら片道ニ時間弱で到着するらしい。ヘリコプターすげーな。お前そんなに速かったんだ。往復でもたったの五時間だし、そんなの三往復できんじゃん。しねーけど。凄さを分かりやすく説明するために三往復っつーことを言ったけど、まあ、普通に一往復だけだよ。するとしても。チャーターするだけで1時間あたり約21万円かかるっぽいし。

 ここまできたらこの105万円も彼氏に任せるとして、ちょっと完璧過ぎて笑けてきちゃうな。だって想像してみません? 深夜一時過ぎ、突然好きな人から乾いた声で、あのね彼氏に浮気されちゃった、っつー電話が掛かってくるわけ。そこで俺が言うのはもちろん、分かった、の一言だけ。実際にはちょっと格好つけが入ってっから、発音的には「……わーった」になんだけど、とにかく、どうしたの? とか、大丈夫? なんて野暮なことは聞かない。たとえ本当に大丈夫だとしても、俺はそんな時は絶対そばにいるって決めてっから、相手が悲しい思いをしてる時点で駆けつけるわけ。もーわかったってなんなのー適当に返事しないでよー、なんて言ってる相手に謝りながら、もう一台の携帯でヘリコプターのレンタル会社に電話して、すぐに一台回してくれ、つーことを言うわけ。当然ヘリコプターなんてレンタルしてる会社なんてセレブ向けなんだから、社員教育も行き届いてて余計な言葉や詮索は一切ない。阿吽。俺とヘリ会社は阿吽なわけよ。ただ一言、御意、だけ。

 ヘリコプターに乗ってる途中、好きな人から、こうやって電話してると会いたくなっちゃうね、なんで横に居ないのー、なんて弱々しい笑い声で言われたりしちゃって、俺も、別れたくらいで気弱になってんじゃねーよ、なんて笑いながら励まして、そうこうしてるうちに相手は泣き疲れたのか睡眠薬の力なのか眠り始める。約ニ時間半後、バラバラバラバラっつーけたたましい音と共に彼女が寝てる駅上空でホバリングするヘリコプター。そこから一本のはしごにぶら下がった俺が降りてきて彼女を保護、サムズアップしてはしごが回収される途中、俺はそっと寝顔にキスする。……随分と高い唇だな……ったく、なんて自嘲気味に言いながら。

 さっきから俺のキャラが二転三転してるんだけど、まあ、そこは、彼氏がうまいことしてくれるとして。で、例のシーンなわけよ。朝の六時過ぎ、俺の部屋のベッドで彼女は目が覚ますわけ。え、あれ、ここどこ? 私いったい……なんて誰もいない部屋で困惑している時、とつぜん俺からの着信が入る。わけもわかんないまま電話をとると、あ、起きた? さっき俺、駅で泣いてる捨て猫を見つけたから拾ってきたんだよね、って、あ、一回やっぱり待って。これ全然違ったわ。俺こんな気持ち悪いこと言おうとしてたの? びっくりしたわ。なにこれ? アハ体験?

 なんなら、書いてて思ったけど、彼氏と別れて俺に電話してくるっつーとこからまず違うしね。絶対してこないもんあいつ。三ヶ月後くらいに、あ、忘れてたけど別れてるよ、っつー言うタイプだし、あとあれ、投げやりに男なんか結局〜云々言ってたけど、それ、いつも通りだわ。だいたいいつも投げやりにそんなこと言ってるわ。そもそも駅でちょっと寝ちゃったと思ったら、通常往復十六時間かかるはずの場所に居るって状況が怖すぎる。ほんとままならねーな。完璧な作戦だと思ったんだけど、彼氏が浮気したところで打つ手が見つからねー。一体どうすりゃ良いの? アドバイスしてくれよー彼氏ー。飲みに行こうぜー。

 なんかそういえばグレッグ・イーガンっつー人が書いた短編に、究極の愛の形を実現しようとする話と、感情を固定する話があって。なんだろ、どっちもイーガン作品の中では比較的わかりやすいからか、クソみたいな自説を並べてそれをさも宝物みたいに見せつけてるファンたちからの評価はそんなに高くないんだけど、俺はなんとなくこの話を気に入っててさ。別にだからって書評なんて始めるつもりはないし、聡明なビキニ環礁シンジケーター(注︰当ブログ『ビキニ環礁シンジケート』の読者を指す造語。今後二度と使われない)なら既にお気付きのように、俺はただ好きな人の話を続けたくてこんな話をしてるわけなんだけど。あ、この先、念のためネタバレあります。

 基本的にイーガンというかSF全般には、ディストピアの例みたいに完全無欠の理想には何か落とし穴があるっつーお約束があるんだけど、

 ひとりきりで永遠を生きたいとは誰も思わない。

 という言葉から始まるこの物語にも、お互いがお互いを完全に分かり合えて、ゼロ距離の親密な状態こそが完璧な愛な形だと考えるカップルが登場して。この時点で悪い予感がむんむんするんだけど、まあこの二人がなかなかすごくって、お互いのことをより理解するためにお互いの身体を入れ替えて相手の立場に立ってみたり、性差を否定するために同性同士になって性行為をしたりしながら、最後は一つの体に二人の心を埋め込む人体実験に参加したりするのよ。

 で 実験は成功して、なんだろ、もうそんなの最強なわけじゃん。離れ離れにならないし、お互いが何を考えてどう感じてるかつーのが自分のことのように完全にわかんだから、二人が目指した究極の愛の形じゃん。でも結局二人は別れちゃうんだよね。なぜかっつーと冒頭のセリフ。そんなの一人となんら変わんないんだから。

 も一つの話は、神経インプラントっつー技術を使ってその時の感情や気持ちのまま「ロック」するっつー話なんだけど、これまたラブラブの夫婦がお互いのことを永遠に好きで居続けるために脳にナノマシンを入れる。で、しばらくの間は幸せに過ごすんだけど、二人はもうそれからただ幸せなだけなんだよね。今以下もないけどこの先ずっと今以上もなくって、その間にも自分たちの娘はどんどんと成長していってあらゆる可能性に満ちていて。幸せってなんだろうね、みたいな話なんだけど。

 なんか、これまでこの話に出てくるカップルや夫婦のことを、んなの分かりきってたじゃん、みたいな、そりゃ完全に分かり合えたり二人の間の時間を止めたり出来ても虚しいだけに決まってるでしょ、なんて馬鹿にしてたんだけど、俺、全然ブログで願ってたわ。このまま好きでいたい、全うしたい、つって。だし、もう片思いなんて実質好きになってしまった日からほぼ止まってるようなもんじゃんね。時間とか痛みとかそういう何もかもが、まるで夕凪みたいに好きになった日のまんま変わんなくって、ただその変わらなさを感じられるからそこに存在しているのがわかる、みたいな。

  なんかたまにそんなのにも飽ききった時とかに、心の中になんの屈託も駆け引きもない状態で、ちゃんとこいつは俺の友達なんだよって言いたくなる時ってない? 好きな人なんだよ、じゃなくて、友達だよ、って。片思いって何も、キラキラしてて、楽しくて、純粋で、尊くて、美しくて、世界が華やいでって、そんなのだけじゃないんだよね。当たり前だけど。排他的に相手を独占したいっつー見苦しい感情がベースにあって、そこになんとかかんとか相手に見せられるくらいの建物をたてて、そしてこの建物が俺の気持ちだよって打ち明ける作業なわけじゃん。なまじそのベースの純度が高かったり、俺みたいに毎日楽しいわーなんつってろくに建物もたてずに、見てー! これが俺の土地なのー! なんてやってると、急にそういう恋愛感情の瘴気みたいなものに当てられて、友達っつーラフな関係が羨ましくて強固で確かなものに思えてくる、みたいな。俺だけなのかな。

 ま、でも、あの孔子ですら、十五にして学に志す。十九にして痛みだけがリアルなら、痛みすら私の一部になればいい。三十にして立つ。四十にして惑わず。みたいなことを言ってて、四十歳でやっと惑わずにいられるようになったつー話なんだから、俺もまだまだ戸惑って悩んで好きでってやってくつもりだし、どうってことないんだけどね。いずれ好きな人に言っちゃったこととかを思い出して赤面しちゃう日も来るんだろうけど、そんなの望むところだよっつー。

 さすがに二十三にしてさっき俺、駅で泣いてる捨て猫を見つけたから拾ってきたんだよね、なんつー馬鹿みたいなことを言ってるのは本当にどうかと思うけど、ま、それもこれも彼氏のせいっつーことで。そんな感じでもはや恒例になりつつある、月始めの所信表明でした。

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